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友人の娘のピアノの発表会。娘は幼稚園児。その発表会は基本的には幼稚園児や小学生の生徒の発表会。30名ぐらいに子供が2分づつ程度弾くんだけど、正直あまり面白くはない。後半は客席の後ろの方で寝てた。

そしてその最後に出てきたのが老婆だった。80、あるいは90歳ぐらいの。子供は舞台の前方、1段の段差を上って舞台に上がるんだけど、その老婆は段差は上れないらしく、後方のスロープを、しかも介添人がいないとなかなかひとりでは上れないらしい。手も震えているような調子で、一体この人が何を弾けるんだろう、正直そう思っていた。ピアノに着席するのもひとりでは立ちゆかないのだから。

彼女がピアノを弾いた瞬間、ビビッた。音が子供のそれとは全く違う。なんか音が全体的に柔らかいし優しい。当然、打力が弱いんだろうからアタックは弱いはず。だけどそういうことじゃない柔らかさがあった。技術的にはそうは上手くはない。だけど、その人の音でしかないというか。やっぱり2分程度の演奏なんだけど、音楽っていうものはまさにこういうものだった。