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人間が人間でいられる所以のひとつは記憶だと思う。記憶を全て失くしてしまったらある意味、もうそのひとじゃない。
記憶の置き場所っていうのは自分の中にだけあるものではなく、服だったり持ち物だったり場所だったりと、自分以外のところにもある。むしろ、記憶って多くの場合、ものや場所に、置き場所がある場合が多いんじゃないのかとさえ思う。アイデンティティって言ってもいいかもしれない。ひとは自分の中にだけアイデンティティを持っているわけじゃない。
ひとがひとでなくなっていく様、ひとがひとでなくなってしまっても、脳と心臓が機能を停止するまでは法律的、生物学的にはまだ人間として扱われる。だけど、その状態はもはや社会的には人間じゃない。